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バイクライフ・購入ガイド

50cc原付はなぜ消えたのか|198万台が13万台に。排ガス規制の“前”に起きていたことを年表と数字で読む

1976年のロードパル5万9800円と最後のスーパーカブ50の29万7000円を並べた画像

MONKEY HEAVEN

映像制作とデザインを本業にする東京在住のライダー。モンキー125・ハンターカブ CT125・FTR223に乗り、バイク・キャンプ・Insta360などの撮影機材を実機で検証して発信しています。バイク雑誌「モトモト」「カブonly」で連載中、YouTubeは2チャンネル合計で約4万人(2026年9月時点)。

2025年10月末、日本の50cc原付の生産が終わりました。理由は排出ガス規制だと言われています。

ところが販売台数を見ると、原付は1980年の198万台から、規制が決まる前の2019年にはすでに13万台まで減っていました。15分の1です。50ccは規制で急に消えたのではなく、40年かけて消えていました。

この記事では、ロードパルとパッソルのブームから、1986年のヘルメット義務化、新基準原付が出そろった2026年上半期の出荷台数まで、年表と数字で「50ccが消えた本当の理由」をたどります。

筆者が制作した解説動画(約10分)。記事と同じ内容を紙芝居形式でまとめています

50cc原付は「規制の前」に15分の1になっていた

原付の販売台数が1980年の198万台から2019年の13万台に減ったことを示す棒グラフ

原付一種(50cc以下)の国内販売は、1980年の約198万台が頂点です。そこから下がり続け、2010年に約23万台、2019年には約13万台になりました。排出ガス規制の強化が決まったのは2020年なので、落ち込みの大半は規制より前に起きています。

年原付一種の販売台数(概数)頂点との比較
1980年198万台頂点
2010年23万台約1割
2019年13万台約15分の1
2025年10万7,454台約18分の1
2026年上半期2万9,472台(出荷)前年同期比 −52.1%

保有台数も同じ動きです。ピークは1985年の約1,460万台で、国民8人に1台の計算でした。現在は約448万台、ピークの3割です。

ラッタッタの時代|ロードパル・パッソル・HY戦争

1976年に5万9800円で発売されたホンダ・ロードパルのイラスト

原付は、もともと自転車に小さなエンジンを付けた乗り物でした。1952年には14歳以上なら許可で乗れ、1960年に免許制(16歳以上)へ変わります。それでも学科試験だけで乗れる一番安い乗り物で、通勤、通学、新聞配達、出前と、日本の生活の足でした。

ブームは1976年に来ます。ホンダのロードパルが5万9,800円で登場し、イタリアの女優ソフィア・ローレンを起用した広告の「ラッタッタ」という一言で、女性が原付に乗り始めました。1年で25万台。翌1977年にはヤマハのパッソルが6万9,800円で続き、こちらは女優の八千草薫を起用して累計100万台に達します。

1982年に年間47万台を売ったホンダ初代タクトのイラスト

1979年からの4年間は、ホンダとヤマハが台数を競ったHY戦争です。値引きは1台3万円を切り、4台で10万円という売り方まで出ました。1982年にはホンダのタクトだけで年間47万台。ホンダが販売店に出した奨励金は1年で200億円にのぼり、1983年にヤマハが敗北を認めて終わりました。この頃、日本で売れたバイクの10台に8台が原付でした。

年出来事
1952年14歳以上なら許可で原付に乗れた
1958年スーパーカブC100発売
1960年免許制になり16歳以上に
1976年ホンダ ロードパル発売(5万9,800円)。1年で25万台
1977年ヤマハ パッソル発売(6万9,800円)。累計100万台
1979〜1983年HY戦争
1980年原付の販売が年間198万台で頂点
1982年ホンダ タクトが年間47万台
1985年保有台数が1,460万台で頂点

1986年、原付は「気軽な乗り物」ではなくなった

1986年7月5日の原付ヘルメット義務化を表すイラスト

保有台数がピークを打った翌年、二つのことが起きます。

  • 1986年7月5日、原付にもヘルメットが義務になった:それまではノーヘルで走れました。髪が崩れる、荷物が増える。買い物の足として使っていた人にとって「気軽さ」が一つ減りました
  • 同じ年、二段階右折が導入された:大きな交差点では右に曲がれず、直進して向きを変えて待つことになりました
  • 最高速度は30km/hのまま:車の流れに乗れず、追い越され続けます
原付の販売台数が2019年に13万台まで落ちた折れ線グラフ

車に追われ、右に曲がれず、頭は重い。「気軽な乗り物」の条件が減ったところから、販売台数は落ち始めます。駅前の駐輪場に並ぶのは、やがて原付から電動アシスト自転車に変わりました。

排ガス規制と新基準原付|50ccに何が起きたのか

125cc以下で最高出力4kW以下という新基準原付の条件を示すイラスト

そこに来たのが、ヨーロッパと同じ水準の排出ガス規制です。2020年に決まり、2025年11月からは新しく出す車だけでなく、作り続けている車(継続生産車)にも適用されることになりました。

メーカーの説明はこうです。50ccでは排ガスの温度が上がらず、浄化装置(触媒)が十分に働かない。技術的に対応はできるが、原付の値段では作れない。

2023年9月、警察庁が有識者検討会を開き、出力を抑えた125ccを実際に走らせて、50ccと同じように扱えるかを確かめました。結論は、総排気量125cc以下で、最高出力を4.0kW以下に抑えた車を原付一種と認めるというものです。2025年4月1日、この「新基準原付」が法律上の原付になりました。

2024年11月に受注したスーパーカブ50ファイナルエディションのイラスト

その裏で50ccのカウントダウンが進みます。2024年11月、スーパーカブ50・ファイナルエディションが発表されました。1966年のC50をモチーフにした青いカブで、受注は17日間だけ、価格は29万7,000円。2025年10月末に国内の50cc原付の生産が終わり、1958年のスーパーカブC100から数えて67年の歴史に区切りが付きました。

本当の理由は3つ|気軽さ・役目・値段

規制は、弱りきった原付への最後の一押しでした。では何が原付を弱らせたのか。数字を並べると、理由は3つに整理できます。

1. 気軽さを失った

1986年のヘルメット義務化と二段階右折、そして30km/hの速度制限。「ちょっとそこまで」の道具としての手軽さが減りました。

2. 役目を奪われた

近所の買い物は電動アシスト自転車が、雨の日と遠出は軽自動車が引き受けました。免許もヘルメットも要らない自転車と、屋根のある軽自動車に挟まれて、原付でなければならない場面が減っていきます。

3. 値段が物価より速く上がった

物価よりも速く上がった原付の価格を示す2本の線のグラフ
車種発売年価格(税込表記は当時)
ホンダ ロードパル1976年5万9,800円
スーパーカブ50 ファイナルエディション2024年29万7,000円

ロードパルから最後のスーパーカブ50まで、価格は約5倍になりました。同じ期間の消費者物価指数は1976年の58.1から2025年の111.9へ、およそ2倍です。原付は、物価の倍以上の速さで高くなりました。

安くて、気軽で、誰でも乗れる。原付の3つの取り柄が、40年かけて一つずつ消えていったことになります。

新基準原付が出たあと、出荷は半分になった

原付一種の出荷台数が2025年上半期の61,483台から2026年上半期の29,472台に半減した棒グラフ

最後の年、少し奇妙なことが起きました。2024年の原付一種の販売は前年から18.6%増えています。生産終了を聞いて買いに走った人がいたためです。2025年も10万7,454台(前年比−2.4%)と、ほぼ横ばいで踏みとどまりました。

そして新基準原付が店に並びます。

車種発売価格(税込)中身
ホンダ Dio110 Lite2025年11月23万9,800円110ccの出力を抑えたスクーター
ホンダ スーパーカブ110 Lite2025年12月34万1,000円110ccの出力を抑えたカブ
ヤマハ JOG ONE2026年3月25万9,600円125ccの出力を抑えたスクーター
ホンダ ICON e:2026年3月22万円電動。1回の充電で81km

50ccより力はあります。ただし安くはありません。結果は数字に出ました。2026年上半期の原付一種の出荷は2万9,472台で、前年同期の6万1,483台から52.1%減。251cc以上の小型二輪の合計に、現在の統計の形になった1993年以降で初めて抜かれました。夏の時点で選べる新基準原付は5車種だけです。

価格の安い順に並べたICON e:と新基準原付3車種のイラスト

規制を通した原付は作れました。でも、安くは作れませんでした。同じ3月にホンダが出した電動のICON e:は22万円で、いま一番安い原付はガソリンではなく電気です。電動アシスト自転車、シェアの電動キックボード、電動スクーター。「安くて気軽」の役目は、エンジンの外へ移り始めています。

50ccと新基準原付は何が違う?乗り換えで変わること

坂道を登るスーパーカブ110 Liteと遅れる50ccのイラスト

ルールは変わりません。新基準原付も原付免許(または普通自動車免許)で乗れて、最高速度は30km/h、二段階右折もそのまま、二人乗りはできません。

項目50cc原付新基準原付
排気量50cc以下125cc以下
最高出力―4.0kW以下に制限
免許原付免許・普通免許同じ
最高速度30km/h同じ
二段階右折必要同じ
二人乗り不可同じ
坂道失速しやすい低い回転で粘り、失速しにくい
価格最後のスーパーカブ50で29万7,000円(生産終了)23万9,800円〜34万1,000円

変わるのは坂道です。排気量が大きいぶん低い回転で粘るので、30km/hで走っていても登りで失速しにくくなります。その代わり、値段が上がります。

安さで選ぶ人は電動アシスト自転車へ、気軽さで選ぶ人は買わずに街角のシェアサービスへ流れ、残るのは原付を「バイク」として乗りたい人です。二人乗りや60km/hでの走行まで考えるなら、小型限定普通二輪免許を取って原付二種(125cc)に乗るという選択肢もあります。

筆者はカブ専門誌『カブonly』でも連載をしています(連載が決まったときの記事)。カブの歴史をもっと深く知りたい方は、誌面もあわせてどうぞ。

50ccから新基準原付や125ccへの乗り換えを考えていて、今のバイクをどうするか迷っているなら、先に査定額を知っておくと予算が立てやすくなります。バイク王の無料査定なら、申し込みだけで金額の目安が分かります。


結局、なぜ50cc原付は消えたのか

安い・気軽・誰でも乗れるという原付の3つの取り柄が消えたことを表すろうそくのイラスト

答えは、規制だけではありませんでした。1986年に気軽さが減り、電動アシスト自転車と軽自動車に役目を譲り、値段は物価の倍以上の速さで上がりました。安くて、気軽で、誰でも乗れる。その3つが先に消えていて、規制は最後の一押しでした。

証拠は、その後の数字です。規制を通した新しい原付はきちんと発売されました。それでも値段が上がった途端、出荷は半分になりました。求められていたのは50ccというエンジンではなく、安さと気軽さだったということです。

消えたのは、50ccのエンジンだけではありません。5万9,800円で誰でも乗れた、あの気軽さです。その役目は、いま電気の乗り物が引き継ごうとしています。

シリーズ前回:ハンターカブ大逆転の歴史(筆者制作)

よくある質問

50cc原付はいつ生産終了になりましたか?

国内メーカーの50cc原付は、2025年10月末で生産を終えました。2025年11月から、排出ガス規制が継続生産車にも適用されたためです。

50ccの原付は、もう乗れなくなるのですか?

いいえ。規制の対象は新しく生産される車両で、すでに持っている50ccはこれまでどおり乗れます。中古車の売買や登録もできます。

新基準原付とは何ですか?

総排気量125cc以下で、最高出力を4.0kW以下に抑えた二輪車のことです。2025年4月1日から法律上の原付一種になり、原付免許や普通自動車免許で乗れます。

新基準原付は原付免許で乗れますか?二段階右折は必要ですか?

原付免許で乗れます。交通ルールは50ccと同じで、最高速度30km/h、二段階右折が必要、二人乗りは不可です。

普通の125ccに原付免許で乗ってもいいですか?

乗れません。原付免許で乗れるのは、最高出力4.0kW以下に制限された新基準原付だけです。出力制限のない125cc(原付二種)に乗るには、小型限定普通二輪免許以上が必要です。

新基準原付にはどんな車種がありますか?

2026年夏の時点で、ホンダのDio110 Lite(23万9,800円)、スーパーカブ110 Lite(34万1,000円)、ヤマハのJOG ONE(25万9,600円)などがあります。電動ではホンダのICON e:(22万円)が原付一種として販売されています。


参考資料

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映像制作とデザインを本業にする東京在住のライダー。モンキー125・ハンターカブ CT125・FTR223に乗り、バイク・キャンプ・Insta360などの撮影機材を実機で検証して発信しています。バイク雑誌「モトモト」「カブonly」で連載中、YouTubeは2チャンネル合計で約4万人(2026年9月時点)。

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